むかしむかし、この世界が出来たばかりの頃、それはそれは美しい女神さまが住んでいました。 女神さまは心優しく、怪我をしたり病気になったりした生き物を助けたのですべての生き物に愛されていました。 ある日この女神さまのところに醜く恐ろしい魔物がやってきました。 魔物は怪我をしていました。 女神さまは他の生き物にしてあげるように優しく手当してあげました。 魔物が元気になるように歌を歌ってあげたり踊りを踊ったり、時には一緒に星を眺めたりしました。 元気になった魔物は女神さまに言いました。 「わたしのお嫁さんになってください」 女神さまは言いました。 「わたしはすべての生き物を助けなくてはいけないのであなただけのものにはなれません」 すると魔物は怒りだし、女神さまを食べてしまおうと襲いかかってきました。 「わんわんわん!」 ちょうどそこに、何かが躍り出て、魔物と女神さまの間に入りました。 それは、首と足に鎖のついた枷をつけられて地の果ての大岩に縛りつけられていた とても強い犬なので、その力を恐れた神様たちが縛りつけてしまっていました。 しかし、生き物たちから女神さまが大変だということを聞き急いでやってきたのです。 おかげで女神さまは救われ、他の生き物たちは大喜びしました。 「ありがとう、これでみんなを癒せるわ」 心優しく勇敢なその犬に何かお礼が出来ないかと、女神さまは考えました。 見てみれば、首と足に枷が食いこんでいてとても痛そうです。 「お礼にその枷をとってあげましょう」 そう言うと女神さまは枷に春風のように優しく息を吹きかけました。 すると、枷がするりと外れたのです。 犬はとても喜び、一生女神さまを守ろうと心に誓いました。 それから女神さまはすべての生き物が仲良く暮らせるように、悪いものが入ってこられないように、海で隔てた島をつくりました。 これでもう女神さまに悪さをするものも来ません。 女神さまと犬はその島で末永く幸せに暮らしましたとさ。 めでたし、めでたし。 ◊ ☞ |